Mes Jours des Ecumes 　　　　　　　―ディーノのうたかたの日々― 犬生は短い・・・。だからディーは毎日一生懸命生きてるんだ。 そんなディーの生活を紹介します。

2009年10月。初めてのお散歩…。今日は待ちに待った日だ。やっとお外に冒険に出かけられるんだ！嬉しくてディーはお家から出たとたんご主人様の足元で思わずクルクルまわって、足をふんづけられちゃった。でもワクワクしていたさも感じないほどだったんだ。お玄関前で張り切って記念撮影をすませると、ピョンピョン飛び跳ねるように歩き始める・・・とその時大きな黒くてぴかぴか光るものがビュン！て、すごいスピードで通り過ぎた。「ディー、車よ。危ない！」あわててご主人様がボクを抱き上げる。気を取り直してまた歩き始めると、今度は赤いのがもっとすごいスピードで通り過ぎて行った。これじゃあ歩けないよ…お外って怖い所なんだね。ディーは道端で固まってしまった。

張りきって出かけたものの…

怖くて固まっちゃった。

「ディーの弱虫！」ご主人様はそう言って笑いだす。悔しくて勇気を振り絞って歩き出す。しばらく歩くと、、何だか懐かしい音が聞こえてきた。何だろう、この音…絶対知ってる音なんだ…そうだ、川だ！大きな橋もかかっていて、はるか下を流れる水を見ることもできた。この町にも大きな川があったんだね…。

目を閉じて、水の音に耳をすませてみる。

ここはディーのお気に入りの場所になったんだ！

ちょっとおすましで、お散歩デビューの記念撮影。 どう？なかなかカメラ目線上手でしょ？

ディーの背丈よりも高い階段だね…。

でも、ちゃんと降りてみせるよ！

河原デビュー、そして厳しい現実…。少しお散歩に慣れたある日、橋を渡って、階段を下りて、河原に出てみると、又懐かしい声が聞こえてきた。犬達の話声だ。そこにはボクみたいなジャックもいたし、ボクよりももっと脚の短い犬、真っ白でふさふさした毛の大きな犬、真っ黒でやせた犬、茶色で縮れた毛の犬・・・見たこともないような犬がいっぱいいて、うれしくって順番に駆け寄って「遊ぼうよ！」って誘ってみた。だけど、みんなは「うるさいな、チビ！」とか「あっちへ行けよ！」なんて言って、だれもボクと遊んでくれなかったんだ。ご主人様は、「行こうよ、ディー。お前みたいなチビはだれも相手にしてくれないよ。」って言ってボクを引っ張って行こうとする。「いやだ！みんなと遊ぶんだ！」って、踏ん張って抵抗したけれど、犬達はプイッとそっぽを向いて行ってしまった。犬はみんな友達だと思ってたのに…。やっぱりお外の世界って厳しいんだね。 だけど時々は、縮れた毛の犬がニコニコ笑って近づいてきてくれたり、尻尾だけでもディーの体くらいある大きな犬がふさふさの長い毛でなでてくれたり・・・やっぱりボクは犬と一緒が一番好きなんだ。

「いやだ！帰らない！みんなと遊ぶんだ！」

「ねえ、一緒に遊ぼうよ！」

そして木々がすっかり秋色に染まったころ、ディーは もうすっかりお散歩に慣れて、毎日お散歩の時間が待ちきれなくて、 「ご主人様、早く、早く！」ってせがむようになっていた。 もう車なんてちっとも怖くない。

落ち葉を踏みしめて、秋の音と香りに包まれる。

水辺のさわやかな空気を満喫中。

お散歩の記録…。お散歩に出かけるとき、ご主人様は時々大きな黒いものを肩にかける。「カメラ」だ。写真を撮って記録しておく機械だ。人間ってヘン。何でも写真に撮りたがるんだから。「記録しておかないと、忘れちゃったら大変、大変！」っていうみたいに。 ボクはそんなことする必要ないよ。キラキラ光る川の水面、朝露に濡れた草の香り、草の中を歩く虫たち、群がって飛ぶ水鳥たち、水たまりの底に広がるもう一つの空・・・そんな素敵なものたちをどうしたら忘れたりできるんだろう！きっと人間は長く生きすぎるから、色んなものを記録しておかないと忘れてしまうんだろうね。ボクたちは今を生きるのに精いっぱい。 時々いたずらしたくなって、いきなりレンズに「お鼻ツン！」してやるんだ。ご主人様は「きゃあっ」と叫んで、カメラを落としそうになって言う。「ディーノのばか！大事なカメラが壊れるところだったじゃない！もう一度やったら蒸し焼きにして食べちゃうよ！」

また写真撮るの？早く行こうよ！もう待ちきれないよ…。

今日も、ご主人様は出かけるときに大きなカメラを肩に掛けた。 又お得意の「記録」だ・・。しょっちゅう立ち止まっては写真を撮るんだ。 ボクはどんどん駆けて行きたいのに、「ディー、待って！」って言って、夢中でカメラをのぞきこんでる。「今日ディーと一緒に見たものを記録しているのよ。」 明日も明後日も来週も来月も・・・毎日同じ道を一緒に散歩するのに、どうして記録なんてしないといけないのかな…。そんな重そうな機械なんか置いといて、一緒に走ろうよ！ こんな気持ちのいい日には、どこまでも駆けて行きたいな。マチネーの始まりを告げるいつもの劇場のアナウンス、開き始めた花の香り、鳥たちが水切りする音の中を、ディーみたいに身軽に走ってごらん！

晩御飯…ディーが一番楽しみにしてる時間。

今日の晩御飯、なあに？

「今日は『、チキンとブロッコリーのリゾット風』よ！」

「やったあ、大好物！」

もうないや・・・。

お昼寝から覚めて、夕方のお散歩から戻りころにはもうお腹がペコペコ。ご主人様がキッチンに近づくたびにボクの期待は高まる。でもボクのご飯を作るんじゃなくて、「コーヒー」っていう苦そうな飲み物を作って、「お仕事してくるわ。」って言ってお2階に駆け上がって行っちゃったりすると、もうガッカリ・・・。待ちくたびれて眠りかけたころ、キッチンからチキンをボイルするおいしそうなにおいがしてくる。今度こそボクの晩御飯だ！『チキンとブロッコリーのリゾット風』は、ボクの大好物だ。チキンのかわりにお魚だったり、ブロッコリーのかわりにニンジンだったりすることもあるけど、やっぱりこの組み合わせが一番。お行儀よくお座りししないと絶対に食べさせてもらえない。3角形にお座りして、お皿が置かれると同時にかぶりついて、一瞬で平らげちゃう。楽しい時間ってすぐに終わっちゃうものなんだね…。

あ〜、おいしかった！ 晩ごはんの後は、リラックスしてお夜食の時間を待ってようっと！ ご主人様はディーのことを『稀代の食いしん坊』って言うんだ…。

お菓子…ディーノの悲しみ。

人間ってお菓子が好き…。 ボクのご主人様もお菓子が大好き。お外から帰った 時も、「パソコン」っていう機械に向かってお仕事して いるときも、晩ごはんの後でお茶を飲んでいるときも、 いつもお菓子を食べている。 甘くてふわふわした香りがお部屋中に漂って、 僕はたまらなくなって要求する。 「ディーにもちょうだいよ！ずるいよ、一人で 食べるなんて。」 ご主人様はちょっと悲しそうな顔でボクを見る。 「あげたいけどね、これは人間用のお菓子なの。 ディーは食べられないのよ。」

ボクは猛烈に抗議する。「どうしてだよ！ ディーだって食べられるよ。ご主人様より ずっと立派な歯があるんだから！ 試しにそのチョコ投げてごらん。3ついっぺんに 噛み砕いてみせるよ！」 でもご主人様は首を振って、「ダメよ、ディー。 絶対ダメ。」 ボクが悲しくなって泣き出すと、ご主人様は ボクを抱きしめて言う。 「ディーは生まれ変わったら、人間のパティシエの 息子になりなさい。毎日ケーキやタルトを お腹いっぱい食べるのよ。」

あーあ、どうしてディーは犬に生まれちゃったんだろう…。

わ〜、おいしそう！人間たちは、毎日こんなのを好きなだけ食べてるんだから・・・。

ディーのおやつ・・・。

ご主人様のと同じお菓子はもらえないけれど、ボクにも毎日お やつの時間があるんだ。ボクにとってはとっても楽しみな時間。 お散歩のときには河原か、両脇に花壇のある道で小さなクッ キーやチーズを食べる。

お昼寝の後は、ちっちゃなタルト。何味のタルトが出てくるかは、そ の時のお楽しみだけど、ボクはイチゴ味のが一番好き。 だけど本当は、もっと大きなケーキやタルトをお腹いっぱい食べて みたい…。

これがディーのおやつ。何だかちょっとさびしい感じ・・・。

ディーは今日夢を見た。 色んなお菓子に囲まれていた・・・。 クリームをぎっしり詰め込んで得意げなエクレール・・・ 真っ赤なイチゴと真っ白な生クリームで着飾ったタルト・・・ 色とりどりの宝石みたいなマカロン・・・。